三代目

三代目J SOUL BROTHERSの携帯フォンの広告が目白駅にずっと出ているのですが、彼らはこんなに「顔が似ていた」でしょうか。ぼくもこの界隈は疎く(エグザイルピラミッドの存在も知りませんでした)名前もほとんどわからないのですが、安売り紳士服の広告のおかげで「ガンチャン」だけは知っていて、そしてこの広告は全員「ガンチャン」に見えるのです。つまり、異様に「カワイイ」に寄せている。

 

カワイイというかネオテニーというか、そういう萌えまで含めたまあ「愛(め)で」?に、黄色い声がほとんど注がれてしまうのが日本で、そしてそちらへの黄色い声というのを、ぼくは出したくないというか出せないのです。出しかたがよくわからない。ぼくはよくトレンディという言葉を口にしますが、これはそういう黄色さの対抗概念です。以前トレンディ時代の歌謡曲K-POPの近しさについて書きましたが、その理由の一端が書かれているブログ(下記)を見て、電車の中でその通り!と膝を打ちまくってしまいました。どうか共感してください。

KとJ:<子どもっぽさ>に対する緊張感|반챠(ぱんちゃ)|note

 

若山

 

 

 

 

年間

ある年の年間ベストをひも解いています。DJ/クリエイターが選ぶその年のベスト・ディスクに最も名前が挙がっていたのが、ロニ・サイズだったのでした(これで何年かわかりますね)。「シェア・ザ・フォール」を初めて聴いた時というのはすごく覚えていまして、さすがにリアルタイムではなく下手したら1年遅れくらいだったかもしれませんが、「もうこれは、紛うことなき最新型だ」と妙な太鼓判を押したのをよく覚えています。

 

90年代の終りの頃は、10年間を総括する特集がよく雑誌で組まれていて勉強しました。ある雑誌の、はみ出しコラムの「ドラムン・ベース」の項には、ロニ・サイズ、スクエアプッシャー、LTJブケムで御三家と書かれていました。今思うとムチャクチャなカテゴライズですし、恐らく誰もそう呼んでないです。しかしぼくは律儀にすべてを聴かなきゃ!と中古盤屋などを探したのでした。

 

その雑誌で決定的なある名前との邂逅もしました。サニーデイ・サービスの「東京」を紹介する項目で、このアートワークを手がける鬼才イラストレーターが誰なのか、まるでそのアートワークによってこれが名盤になったかのような口吻で書かれていたのです。「東京」自体は前から知っていましたが、そう言われてみるとこのジャケットはジャケット以上の「作品」というか「アート」と呼べる凄味がある。ここでひとつ音楽体験に違う地平が、確かに拓けたのでした。

 

好きな音楽を、高校や地元で誰かと共有したりはまったくできませんでした。インターネットが普及してたらまた違ったでしょうね。ぼくは好きな本や音楽を共有できる人を、10数年は探していたのです。今は(ほんとに数人ですが)見つかって、めでたしめでたしではあります。

 

若山

 

ザビエル

「シャワー上がりに、鏡に向かうと頭皮がスケスケに見えてしまうんです。特に、頭頂は激しく、フランシスコ・ザビエルのようになってしまいました」

 

...というほどではないにせよ、自分も薄毛が進行しているような気がしています。30代半ばなのである程度は仕方のないことです。ただ、気にして友達や家族に尋ねても「変わらない」としか言われないので、自分しか気づかない程度の、微々たる進行なのかもしれません。「いや、ぼくも髪薄くなってるよ」と返す友達もけっこういますが、まあ総じて変化なしに傍目には見えるので、30代はみんなそう感じるものなのでしょう。

 

もともと恐ろしくコシとボリュームがない、かつ雨の日にうねる髪で、10代の頃から髪型で満足したことがほとんどありません。20代のときストレートパーマをかけたら、ラッセンが好きの人みたいにベターッとなったこともありました(おそろしく悪評でした)。とにかく羨ましいのが「分け目がつけられないくらいの直毛」のひとです。皆勝手にボリュームも出てますし。もみあげが浮いてたりしたらそれだけでザ・羨望です。そういえばある時期まで、恋に落ちるのはいつでも直毛の人でした。

 

取り返しがつかないくらい薄毛が進行し、迷いなく「理想の髪質のウィッグ」をつけられたら、かえって良いかも...と時々思います。こういう話をすると「かつらなんて嫌だよ、電車の中でかつらの人とかすぐわかるもん」という人がいますが、これは間違っています。世の中には「バレバレのかつらの人」が一定数いるというだけで、「バレないかつらの人」はバレないのだから、実際に統計でも取らない限り、認識すらできないのです。

 

若山

 

 

TABF2

去年のアートブックフェアもとても思い出深いです。ZINEに参加してもらった友達の写真集も一緒に並べていたところ、彼のファンなのか外国のお客さんがたくさん来て、ものすごく無理のある英語で応対したりしました。なかにひとり、後日郵送してくれ、というかたもいたり...最後は筆談です。あと、何の予告もなしに来てくれる人というのもいて、これが久しぶりの再会となるともう、たまらなく嬉しいんですね。クオカードの支払いだって受け付けます。何度売らずにあげちゃおうと思ったか。

 

その後のささやかな打ち上げもすごく面白かった。anoutaふたりと詩人の友達、レーベルオーナーの友達、それにイラストレーター/デザイナーの先輩と、信濃町を怪しい話しながらうろうろして。先輩以外の4人は同学年なんです。偶然には絶対に集まらない4人です。だからもちろん連帯感があるというわけではないのですが、なんというか「人間交叉点」じゃないですが、同じ場にこうしているのが面白くて。ぼくはもう責任もって司会進行に徹しました。まあ話題はやっぱりバラバラでしたが...

 

若山

 

 

 

TABF

金曜日からTOKYO ART BOOK FAIRが始まりましたね。anoutaで作っているZINEは今回イベントに間に合わず出展していません。なので今回はお客さんとして...と言いたいところなのですが、ちょっといろいろ用事がありそれすら叶いそうにありません。

 

100以上ブースが出るのですべてをチェックできているわけではもちろんないのですが、これはほしいなというのがいくつかあります。りかちゃんさんと「歯のマンガ」のコラボZINE「カトちゃんりかちゃんごきげんテレビ」、Flau Recordsのブースで買えるTakaoさんとMadeggさんのEP&ZINE「Farthest」(どんな形状なんでしょう...これはぜひ手に取って見てみたい)、それから伊波英里さんのセレクトしたブースでは死後くんやDD戸田さん(去年anouta買ってくれたんですよね。ほんとうに嬉しかった)の新作ZINEがあるようです。去年は中南米インディのコンピ&ブックレット「The Fictional Map」が素晴らしかったので、今年も音楽系探せばいろいろあるんでしょうね。やっぱり行きたくなってきました。

 

anoutaは何年もブースを出していますが、イベントは詩人の友達が出展しているところに遊びに行ったのが確か最初です。まだ3331が会場だったかと思います。要するに、彼と一緒に作ったものを売ってみたいなーと思ったのでした。結局今のところ一緒のブースで出展したことはないのですが、その翌年だったかな、anoutaのブースとその友達たちのブースがたまたま向かい合わせだったんです。すごく嬉しくて、珍しく写真をたくさん撮ったり、彼と会場でメールをたくさん送りあったのを覚えています。そういえばいろんな事情で、結局その日が一期一会という人がその年は何人かいました。

 

なんだかんだ言って、けっこう思い出深い出来事がたくさんあるんですよね...遊びに来てくれた人のこととか思い出すと、割とその時の交友関係そのままで切なくなってしまいます。なんだかいろいろ書きすぎてしまいそうなのでこの辺で。上記のZINEはどれもぜったい面白いので、会場行くかたはぜひ見てみてください!

 

若山

 

 

 

不穏

仕事で嫌なことがありました。怒られたとか怒ったとかではありません。むしろ自分の果たす責務から見れば、極めて穏当な一日だったと思います。自分と関係のない話で、自分が勝手に嫌な気持ちになったのです。

 

自分の横の部署で制作に携わっているメンバーのなかに、仕事の要領がいつもどこか悪い契約社員がいます。「期日までに最良のものを仕上げる」のうち、いつもどこかが抜けてしまうのです。期日に急きょ別の人に助けてもらったりして、確かに周りに迷惑をかけてしまう、そんな人なのでした。

 

いつからか、その人が帰ったあとに、その人の作業中のデータを開いて現在の進行具合や不備を確認する正社員が出てきました。もちろん最初は好意や「必要に迫られて」だったのでしょう。しかしいつしか、その目的がその人の「できなさ加減」を複数名で共有するため、になったようなのです。「楽しいダメ出し」というやつです。

 

その仕事と関係のない人まで集まって、どう考えても枝葉末節としか思えない仕事の粗を本人不在の時間に指摘しあっている。そのために集まって、遅くまで残っている。傍目に見ていてあまりにも不愉快だったのですが、「そういうのやめたほうがいいですよ」と言えなかった。自分の業務と関係がないのもありますが、なによりそれで不穏になるのが怖かったのです。

 

「嫌な光景」と不穏を恐れる「嫌な自分」の両方を重く感じ、ひどく落ち込んでしまいました。こっそり冷房を切ってから部屋を後にしたので、その後彼らはそんなに長くダメ出し作業をしていないとは思いますが。

 

若山

 

 

不安

ボサノヴァ教室の先生から「発表会の日程が決まりました。○月×日です」と言われて「!!?」とオーバーリアクションしてしまいました。近いとかそういう話でなく、発表会なるものがあることすら知らなかったのです。大体いまのスキルで何を人前で演奏しろというのでしょう。だましだましミニマルでもやればいいのでしょうか。

 

この教室に通い始めてもう半年くらいでしょうか。友達の働くカバン屋に程近いこの教室は場所柄か、いろんな国の人が来ています。僕の前の時間は、サリーを纏ったご婦人が、ウクレレを習っています。自分も含めいろんな国が音楽を通じて交叉しているというのは、なんだか愉快な気持ちになります。

 

朝の出勤前に通っているので、その日のおさらいをすぐできないのが玉に瑕ですが、それでも日々発見続きです。ぼくはコード進行にとても興味があるので、理論を聞く時間もすごく楽しいです。ボサノヴァボサノヴァたるコードの動きってありますよね。例えば普通はⅡm7-Ⅴ7-Ⅰ、といくところをⅡm7-Ⅱ♭7-Ⅰ△7と動かすような感じ。家に楽器がある人は知ってる曲の「Ⅱm7-Ⅴ7-Ⅰ」をこう変えて弾いてみてほしいのですが、もう途端にアプレミディです。だけどこれを「オシャレな」と捉えるのは少しピント外れみたいです。先生によるとボサノヴァクリシェは着地するようでしない、感情で言うと「不安」に近い響きなのだそうです。

 

なんとなく「自分が何故ボサノヴァを習っているか」が、この話で分かった気がしました。ぼくは「安心」より「不安」に、音楽の興味があるんですね。そしてこれを「美しさ」とは絶対呼びたくない。ここが分かれ目なのです。

 

若山