不穏

仕事で嫌なことがありました。怒られたとか怒ったとかではありません。むしろ自分の果たす責務から見れば、極めて穏当な一日だったと思います。自分と関係のない話で、自分が勝手に嫌な気持ちになったのです。

 

自分の横の部署で制作に携わっているメンバーのなかに、仕事の要領がいつもどこか悪い契約社員がいます。「期日までに最良のものを仕上げる」のうち、いつもどこかが抜けてしまうのです。期日に急きょ別の人に助けてもらったりして、確かに周りに迷惑をかけてしまう、そんな人なのでした。

 

いつからか、その人が帰ったあとに、その人の作業中のデータを開いて現在の進行具合や不備を確認する正社員が出てきました。もちろん最初は好意や「必要に迫られて」だったのでしょう。しかしいつしか、その目的がその人の「できなさ加減」を複数名で共有するため、になったようなのです。「楽しいダメ出し」というやつです。

 

その仕事と関係のない人まで集まって、どう考えても枝葉末節としか思えない仕事の粗を本人不在の時間に指摘しあっている。そのために集まって、遅くまで残っている。傍目に見ていてあまりにも不愉快だったのですが、「そういうのやめたほうがいいですよ」と言えなかった。自分の業務と関係がないのもありますが、なによりそれで不穏になるのが怖かったのです。

 

「嫌な光景」と不穏を恐れる「嫌な自分」の両方を重く感じ、ひどく落ち込んでしまいました。こっそり冷房を切ってから部屋を後にしたので、その後彼らはそんなに長くダメ出し作業をしていないとは思いますが。

 

若山